第3話 ベンチャー企業

2000年6月
インターネットで物を買うことがまだまだ一般的ではないこの時代、開業当初は、元同僚や関係者、親戚などのお祝い需要で一定の売上があったものの、半年たっても思ったようには売上げは上がりませんでした。

ギフトラッピング

ギフト需要を取り込む為に考えた亜麻(ジュート)を使ったラッピングは、渡した瞬間にゴミになってしまう包装紙を、再利用可能なものにできないものかと考案したものでした。
(2020年でジュートラッピングは資材不足でサービス停止)
当時はベビー服を中心に販売していたこともあり、そこそこギフトで利用頂く方もいましたが、それでも売り上げはまだまだでした。

 

貯金も少しずつ目減りしてくるし、頭に「再就職」の文字がよぎってきて、だんだんと焦りが強くなってきます。

(なかなか難しいなぁ。アルバイトでもした方がよいかな。)

暇な時間を利用することにして、データ入力を請け負ってみましたが、5分程度かかる入力作業が1件数十円です。やってもやってもお金になりませんでした。

そんな状態で春を迎えていましたが、前職の同僚から飲み会の連絡があり、参加することにました。

会合に行ってみると、それぞれの道へ進んだ懐かしい面々(外資なので転職も多い)もいて、久しぶりに会って元気をもらえる一方、活躍している姿に羨ましくも感じる自分がいました。

誘ってくれた友人は、辞めてから様々な方面の方と縁があったようで、
「ITに強い人を探しているベンチャー企業があるので、会ってみない?」とのこと。

話を聞いてみるのもよいかなと、後日面談することにしました。

 

お会いしたのは、渋谷にある携帯マーケティングのスタートアップ会社の社長でした。

どんな事業なのか話を聞いてみると、携帯電話でアンケートを取って、そのアンケートを元に定期的に興味のあるコンテンツ(メルマガ)を配信するというサービスだそうです。

各コンテンツの執筆は現役の雑誌ライターの記事でクオリティが高いものにして、その関連で企業の広告も配信するというビジネスモデルです。

当時はimode全盛時代でスマホもないし、携帯電話に広告を出すという場合に、趣味趣向に合わせて訴求できる広告メディアはありませんでした。

まだ構想と開発の段階でサービスは始まっていませんが、ちょっと面白そうだなと思い、その開発のCTOとして働くことになりました。

ベンチャーで働くことを安易に考えていましたが、ベンチャー企業というのは時間との戦いです。
限られた人材・資金を最大限に利用するには、早くサービスを開始して、早くお金を回収しないといけません。

ベンチャー企業に出資している株主たちも、資金が底をつく前に、新たな資本注入せずにサービスが始まって欲しいのでプレッシャーをかけてきます。

当然、最初は定時帰りだったものが、夜になり、深夜タクシー帰りになり、泊りになり...と激務が続きます。

一方、ハーモネイチャーの仕事は帰宅してからです。
問合せに応対し、注文の商品を梱包し、翌朝郵便局へ持ち込み、その足でベンチャー企業へ出社するという日々が続きました。

その企業のITを担っていることや報酬もそれなりにいただいていたので、当然自分のビジネスの方は力が入りません。

数か月後、何とか無事に第一弾のサービスイン(公開)となり、少しほっとしたのですが、次の開発が始まっています。

激務は相変わらずの状態でしたが、10月には新しい家族が増えました。

その日は、妻の陣痛が未明から始まっていたので、出産に立ち会うことができましたが、もし出社後だったら間に合わなかったかもしれません。

出産翌日、息子の容態が思わしくなく精密検査のため少し離れた大学病院へ救急搬送になってしまいました。
土曜日でしたが、既に渋谷の事務所に出社していた私は、搬送には間に合わないので義兄に立ち会ってもらうことになりました。

その後、妻が退院するまでの数日は、大学病院へ面会に行き、ベンチャー企業へ出社し、帰宅後ハーモネイチャーの受注と梱包、となり、さすがに疲れも出て電車を乗り過ごしたりしました。

 

(このままだとどんな人生になるだろうか)
(どんな人生を送りたいだろうか)

思っていたより小さく生まれてきた我が子の、無垢な姿を見ながら、その成長を見守る決意をしました。

2001年冬
1年半という短い時間でしたが、「2足のわらじ」と決別し、ベンチャー企業から離れることにしました。





第3話 | ベンチャー企業

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