第1話 オーガニックコットンとの出会い

1999年春、世間では2000年問題が大きく取りざたされている頃、外資系ITアウトソーシング会社にSEとして勤めて6年目に入っていました。

クライアント(取引先)は、グローバル企業が多く、海外への出張やグローバルな人材との交流など刺激的な経験ができ、職場環境にも恵まれていました。
仕事は忙しいながらも楽しいし、仲間にも恵まれ充実した日々を送っていました。

ところが、不思議な感情もふつふつと芽生えてきていました。


何かが足りない。何かが違う...
得意なIT系で仕事ができているのに、何か穴の開いたような感覚…


そう感じ始めていた頃、アルバイトでバーテンをしていた大学生時代の光景が頭に浮かびあがってきたのです。
そこでは、様々なお酒を作り出し、お客様へ作品(カクテル)をテーブルに届けていました。

「ありがとう」「美味しいです!」の言葉をもらい、(あくまでもクールな顔を装いながら)内心で大きな喜びを直接感じ、もっと、期待に応えられるようお酒を研究した日々…

みるみる蘇ってきました。

(直接の感謝をもらえる仕事って何かあるのかな。)

SEとして、企業担当者からの(納品されて当たり前の)「お疲れ様」ではなくて、サービスしたことを喜んでくれる「ありがとう」をもらえる仕事がしたいと思い立ったのです。

今なら失敗してもやり直せる(はず)、そんな気楽な考えも手伝って、結婚してまだ1年の妻に相談してみると、
「やってみればいいんじゃない。でも借金はしないでね。」

その言葉に後押しされて、新たに始められそうなビジネスを探すことにしたのです。

思い立ったが吉日、翌週には会社に辞意を伝えましたが、思いのほか、チームからの引き止めや、クライアント(外資金融機関)への移籍の誘いもあり、迷います。

(移籍したら報酬はぐっとあがるけど…まずは、自分の思い描いた方向へ進んでみよう)

結局、時短出勤をしながら半年後に退職することにしました。

それからは、何をしたらよいか、何に興味があるのか、自分は何ができるのか、何がしたいのか、自問自答をしながら、様々な可能性を探していました。

就職活動のときのような、所属先を探すのではなく、熱意を傾けられるもの、自分にも家族にも社会にも受け入れられるもの、そういったものを探し悶々と過ごしていたある日、

本か何かの雑誌に載っていた「オーガニックコットン」の記事が目に留まりました。

(無農薬有機栽培[※当時の解釈]の綿? 肌にも刺激が少ないし、有機野菜は注目されてきているし、これからブームにもなるかも)

子供のころから肌が弱く、よく皮膚科にお世話になっていたから、妙に親近感が沸いたのを覚えています。

小売店や百貨店などで、オーガニックコットンの衣料品を扱っていそうなお店を調査してみましたが、

(生成色、素朴なデザイン、高価格と売れそうにない3拍子が揃ってる)
(これは、いわゆる匠の製品としての訴求なので一般的に受け入れにくいなぁ)

少し落胆する国内の現状だったのです。


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